アビサエ / ラルチザンパフューム

この世には2つの世界がございます。
アビサエのある世界と、アビサエのない世界です。

アビサエ（ABYSSAE）/ ラルチザンパフューム（L'ARTISAN PARFUMEUR）

note：ローズ、ユーカリ、カシュメラン

忘れもしない、長い長い香りスランプに陥っていた2022年、サロンドパルファンの会場にて、数か月あたためてきた念願のテネブラエ先生を購入し、久しぶりの高揚感に浮足立っていた私を容赦なく襲ったのが、「こちら同じシリーズの新しい香りです～」みたいな言葉とともにお姉さんから手渡されたアビサエﾊﾟｲｾﾝのサンプルとムエットの衝撃でした。

第一印象としては、あ！これはテネブラエ先生と似てる！似てるけど少し華やか！好き！なんだよこれ！といったもの。
先生同様、とっても透き通った木のような、はたまた水のような香り（アクアとかオゾンといったあのジャンルのノートのことではない）のベースに、真っ赤なローズが乗っかっています。

私は本当は「常にめっちゃフローラルを纏う自分」でありたいという謎願望を持っているのですが、モロにフローラル一辺倒の香りは、好きだなーと思って試しても大抵気分が悪くなり、体調を崩してしまうという、これまた謎の仕様によりかないません。
だけど「ちょっと入ってるフローラル」なら大丈夫。「ちょっと入ってるフローラル」ばんざい。「ちょっと入ってるフローラル」大好き。「ちょっと入ってるフローラル」でいいから、フローラルを纏う自分でいたい。

アビサエﾊﾟｲｾﾝのローズは丸みがあり、「青々しい生花っぽい香り」とはたぶん異なると思うのですがみずみずしく、当初は微量のユーカリによる清涼感に引き上げられるように凛と、時間の経過とともにアンバーの温かい甘みに包まれて光量を増していきます。
このアンバーがまた、本当に透き通った琥珀色なんですよ。目に浮かぶというか、本当に「見える」ようなアンバー。

「アビサエ」とは深海という意味らしいのですが（中二ゴコロをくすぐるこういったネーミングもラボタニックコレクションの良いところ）、それを知る以前から、いや2022サロンドパルファンで出会ったときからもう見えてましたよ。真っ暗い真の闇、それを満たす透明、そこに浮かぶ透き通った深紅と琥珀色の強い光が。

なんかたびたびSNSで話題になる件ですけど、私は必ずしも香水が高尚なものばかりでなくても別にいい（どうでも）、よくわかんない、というタイプですが、アビサエﾊﾟｲｾﾝは芸術作品だなーって思います。テネブラエ先生もそうでしたけども。

そんなわけで、それでも数ヶ月間、いただいたサンプルでのお試し期間を経てボトルを手にしてからは、私の香水ベストイレブンの中でも、アビサエﾊﾟｲｾﾝは使用頻度としてはおそらくもっとも高く、平日の仕事、それも出社の際にはほぼほぼ必ず纏うようになりました。
私はアビサエのある世界に移行したのです。

この世界、なんか良いことが多いんですよね。胡散臭いインフルエンサーみたいなこと言うようですけど。
仕事そのものも捗るというか、過去にない歩幅で飛躍することができているし（もちろん普通に頑張ったんですが）人間関係もいいというか、職場の人間関係で困ったことって私は元々ないですが、にしても、とても尊敬する人たちに出会えて、そういう人から徐々に信頼を得ることもできて、その手ごたえを感じられるというか、私にしてみれば、仕事していてそれが一番嬉しいことでもあるので。
そういったできごとによって「良い記憶」と、この香りが結びついてさらに愛を深くしていくのです。手持ちの香水ってそういうの大事だし。

そうしてこちらの世界へ来てもうすぐかれこれ1年たつわけですが、どんな季節のどんな気候でもアビサエﾊﾟｲｾﾝは美しく、暑い時期などはより赤く甘く華やかに、逆に寒い時期にはじんわりとしみ出すように香ります。どっちもいい。
1年中使えて飽きないところもいい。

朝、起き抜けでスプレーするとトップのユーカリにすっきりシャッキリ頭が晴れて、よーし今日も動くぞ！と気分が上がり、
日中、この香りの主役のローズは私の願望そのもので、
午後になるにつれだんだんホワホワと甘いアンバーが栄養となりつつも疲れた心身を癒してくれて、
帰宅後、おふろの頃には少しパウダリーにすら感じるような、ときにはミルキーにも感じるような、はたまた少しインセンスっぽくも感じるような、お前はいったいどこに隠れてたんだ？という甘い残り香も見え隠れして、
幸せに1日を終えることができます。私にとってアビサエﾊﾟｲｾﾝとはそういうものです。

どこぞのYoutuberに紹介されて以来品薄だという噂もお見かけしましたが（真偽不明）、もういいよ、モテ香水でもなんでも。こんな良い香りがモテないわけがないからな。
アビサエﾊﾟｲｾﾝ、これからもよろしくお願いします。

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