嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

インペリアル ティー / キリアン

子供の頃、父親が家の周囲にやたらめったら植物を植えておりました。
オシャレなガーデニングとかじゃなく、わりと鬱蒼としたやつです。

鬱蒼とした中、父がブドウを食べながらうろついて
タネを口から吐き出して捨てたのがいつの間にか育って
それはそれは大きなブドウができました。

その実は甘すぎて、酸味が極端に少なく、私はあまり美味しいとは思わなかったのですが
周辺にはとても芳醇なブドウの香りが立ち込めていたのがたいへん印象的です。

以降、実がなっていないときでも、
なんなら冬の間もずっと、ほんのりとブドウの香りが漂うようになりました。
美味しくはなかったけど、あの香りは好き。

インペリアル ティーは、ちょうどその記憶を呼び覚ます香りでした。
ブドウブドウと申しましたが、インペリアル ティーは主にジャスミンの香りです。
ジャスミン、という名のブドウの品種もあるらしく、両者の香りにはそもそも共通点が多いっぽい。

なので、私の持つ印象としてはとってもフルーティ。
鼻を近づけると、意外とインドールが効いていて
ジャスミン狂の方でも、きっと物足りなさを感じない青臭さ。

とともに「お茶の香りの香水」からよく香るあの香り(私はそれがイマイチお茶と感知できない)。
ほんの少し苦くて、グリーンぽい清涼感。
この「お茶感」が、なんとなく動きを感じさせるというか、風っぽいです。風通しが良い。
ホットよりは、アイスのジャスミンティーっぽい。

香りはすぐに消えてしまう、といった感想も散見されますが、
私の肌では、控えめながらけっこう粘り強く香り続けます。
この季節は朝、ひざ裏につけることが多いですが、
退勤近い時刻、忘れたころにふわーっと上品に香ってきたりします。

そんなフェーズも過ぎて「残り香」となっていくにつれ、
鼻を近づけないと私はあまりわからないですが、アイリスのような
とても粒子の細かいパウダー感が出てきて、なにげにこのへんも良いですね。
某所の情報によればバイオレットが入ってるらしい。

全体として、強い個性や主張を感じるような香りではないのですが
中国のめっちゃ希少な烏龍茶「大紅袍」をイメージしたとされるコンセプトに
ラグジュアリーなブランドイメージもあいまって、
それでいてとても個人的な懐かしい記憶を呼び覚ます香りとして、
愛着をもって使い続けそうな1本。

インペリアル ティー / Imperial Tea
jasmine sambac, bergamot, guaiacwood, yerbamaté, violet
Calice Becker