嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

レ エ ショコラ / シャボー

私が香水にハマり出した子供の頃、
グルマン香水の代表選手といえば、少々世代は上だけどミュグレーのエンジェルと
たぶんロリータレンピカが、絶対的二大巨頭として君臨していたように思います。

そんな中でボディショップやディメーターなんかが、もっとリアルで、しかもシンプルで
ある種香水っぽくない、甘いお菓子系のシングルノートフレグランスをたびたびリリースしており
それらはそれらで熱心なファンは数多かったように見受けられましたが、
当時はどちらかというとカジュアル雑貨に近い扱いであったように思います。

で、具体的にいつ頃からどのような経緯で、何がきっかけとなったのか
詳しいことはよくわからんのですが、
現在はそういった、昔でいう「香水らしくない香り」の香水たちが
グルマン香水の中でも「主流」と呼んで差し支えないほどの地位を
(たぶん)すっかりと確立し、人気を集めています。

(なので、若い世代からすれば、私のようなのが口にする「香水らしい」とか
「らしくない」といった表現そのものが意味不明であろうと思います)

私は、お菓子まんまの香りを、
服飾の一環として普通の大人が纏うのは多くの場合「ヘン」である、という価値観が勝っている方なので
そういった香りを、本気で自分のものにしようと考えて購入することはありません。
とはいえ、もし自分じゃない誰かがそういった香りを纏っているのに気付いたら、
ちょっとハッピーにもなるであろうと、そう予想する程度には、甘い香りそのものは普通に好き…という
微妙な立ち位置であることを申し添えておきます。

そんな中で、あるとき唐突に新しいグルマンを嗅ぎたいと思い立ち、
お取り寄せしたのがシャボーのディスカバリーセットでした。

レ エ ショコラ(Lait et chocolat)/ シャボー(CHABAUD)
TOP NOTE:Jasmine, Chocolate
HEART NOTE:Cedar, Teak wood
BASE NOTE:Vanille, Musk, Milk, Chocolate

チョコレートそのもののおいしそうな香り!とはたびたび耳にしていましたが、
ジャスミンやウッディがクレジットされているあたりに好感を持ち
つまりはいまどきの「リアルすぎるグルマン」の顔をしつつも、
私のような古の民が求める「香水らしさ」「フレーバーじゃない感」も
こっそりと併せ持ってくれているのではないか…?という期待から
このブランドを選んでみたという経緯があります。

トップ、噂にたがわず甘いチョコレート菓子そのものの香り…なのはその通りなのですが、
思いのほかジャスミンがしっかり出てきます。ちょっと驚いた。
そのバランスは「ジャスミンの香りの香水ですよ」といえるほどではなく、
とはいえ「チョコのほかに何かニオイがするよ」と誰もが感じる程度には独立して存在しており、
「いまどきのグルマン」を求めて試した方々には好き嫌いが分かれそうな印象を持ちました。

そんな、ある種の違和感を与えて注意を引くジャスミンは10分もしないうちに消え去ってミドルへ。
トップからのチョコレートがますます元気に温度を上げて香るのですが、
このチョコレートがかなり甘い部類の味を思い起こさせるタイプのもので、
何か小麦粉系のチョコ味の焼き菓子の焼き上がり直後のような香りです。

ウッディの気配は私の期待には反して本当~に微かで、
そのかわり、クレジットにないのだけども、ナッツ系の何かがまあまあ存在感をもって現れます。
これが過度な子供っぽさを回避する一因になっているのだろうか?
とはいえわたくし実はチョコレートと、ある種のナッツの組み合わせが少々苦手で
たとえばモンタルのチョコレートグリーディーなんかはそのへんから挫折していたりもするため
少々テンションが落ちてしまった…のですけど、まあさほど不快でもありませんでした。

後で思ったけど、この香水の本当にすごいところはこのあたりかもしれません。
こういう系統の香りの割に、押しつけがましさが全然なくて上品なんですよね。
そのためか、少々苦手な要素が入っていたとしても、あーもう洗い流そう、という気にはなれなくて
かといって香料が「天然」であることを理由に
なんでもかんでも即消えてしまう昨今よくある「ニッチ」香水とも違って
しっかりと長く、肌の近くで香ってくれてはいるんです。
それが仕事中だったり家事の最中なんかの忘れた頃に、ふわっとちょうどよく香ってくれます。

小一時間もすると、バニラやムスクが徐々に力を持ち始めてラストらしき領域へ。
ミルクみが強いです。良い香りです。
良い香りですが、やっぱり総合的には食べ物の香りですね、これは。
そして、私の印象としては、チョコレートというよりはチョコレート菓子。

個人的には、もう少し「カカオ」多めの、
そのカカオに関してもあまりフルーティな酸味系ではなく、苦み強めの、
そういうカカオが多めに使われたシンプルなチョコレートの方が好みではありますが
甘くて焼き上がりの温度感すら感じさせるようなチョコレート菓子の香りをお求めの方にだったら、
私はこのブランドをおすすめしたいです(モンタルよりも)。

※今日の一曲
なんでもないチョコレートなのですが、ちょいちょいカオティックなギターに中毒性があります。


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