嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

すべてのウード香水はクサい。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました

表題の件につきまして、私は常々、納得がいきませんでした。

「世の中に氾濫してるウードの香水、なんであんなにクサいんだろう…」

ウードにまつわる香水は、
各ブランドごとに必ず1本はラインナップされているくらいの印象があります。

それもそのはず、トムフォードのウードウッドをきっかけに中東から火がついて
ここ10年くらい、世界的に大流行していたそうなのですね。あまり知りませんでしたけど。

したがって、売り場で漂ってきたり、
たまたま試した香りがそれだったりといった機会は当然多くなり
私は常々、納得がいきませんでした。

沈香はあんなニオイじゃない…」

ウードを冠する香水は、
必ずウード以外の香りと組み合せて構成されております。
意味がわからん。シンプルに、ここが意味わかんなかった。

代表的なのがスパイスだったり、アニマル香といわれるものとの組み合わせ。
このあたりの香り、オリエンタルとかオリエンタルウッディとかいうことで、
昔からある香水の一大ジャンルであり、
中東で大人気の香りであることもわかるんだけど、
結果として、沈香を炊いたときの香りとはまったく違うものとなっているわけで、
だったら別にそこまでウードウードとウードを主題としなくてもよくない?
誤解を生むからやめてくんない?

何かと何かを組み合わせて、結果、
沈香を炊いたときの香りに近い香気が再現される…ということならわかるけど、
わざわざウードとウードじゃないものを混ぜて全然別な香りを作っておいて
結局ウードの名前をつけるなんて、
一体何がしたいんだお前は???????くらいに思っていた。

ときどき見られるローズやジャスミン等のフローラルとの組み合わせも同様でしたが、
特に不満だったのが、煙の香りとの組み合わせ。
これがかなり多い。けむい!くさいよ!

…以上、すべては私の大きな勘違いでした。

ウードが沈香を表す中東方面の言葉であるという認識はありました。
香水界ではずっと「アガーウッド」とか言われてきていたものという認識もありました。
でも、認識はそれだけでした。

私にとって「沈香」とは、幼少から日常的に嗅いでいた、日本の香道のあの香りのことでした。
それが香水の「ウード」とは、ずいぶんと違うものなのだと気づいたのは、割と最近のことです。

中東でのウードの楽しみ方は、そもそも日本とはだいぶ違うらしいのです。
たまたま検索でたどり着いた以下の記事を読ませていただき、
私はようやく、これまでの疑問や不満がバカバカしい勘違いであったことをを理解したのです。

seiwanishida.com

端的に言って中東では、沈香沈香単体で燃やして楽しむことはどうやらないようです。
沈香の原木を粉にしたようなものを、他の色々な粉と混ぜて練って乾かして火をつける(これは日本人でもイメージしやすいやつ)とか、
同じものを、さまざまな香りを配合した香油に浸けた上で火をつけるとか、
チップ状の沈香の原木を、さまざまな香りを配合した香油に浸けた上で火をつけるとか、
何かそういった楽しみかたが、中東の「ウード」らしいのです。
なお、火をつけたら、当然煙モクモクです。(香道で香木を炊くときは、基本的に煙を立てちゃいけない)

知らなかった!!!!!!
みんな知ってたの?どこで知ったの?いつの間に?
なんで教えてくれなかったんですか?????????

中東の人はめっちゃ香水好きだよね、くらいの認識はあったが、
好きっていうかとても重要な文化であり、街で香りモノがカジュアルに売られているのはもちろん、
それぞれのお宅ごとに脈々と受け継がれる香りのレシピがあったりするとまでは知らなかったし、
それらをひっくるめて「ウード」とか「バフール」とか呼ぶのだとも知らなかった。

したがって、ウードを謳う香水の香りが、
ウードとともにスパイスやアニマル、フローラル等と組み合わせられているのは当然であり、
ときに煙がプラスされていることで、
むしろより生々しい中東文化としてのウード香が再現されているともいえるわけです。
それを、くさいとかなんとかいってすみませんでした。

これは言い訳ですが、インターネットでは、
日本の香道と、西洋の文化である香水にまつわる話題をリンクさせる記述はそれなりにあっても、
香道と、中東の文化であるウード(や、香油)を具体的に比較したりするような内容の記述って、意外と見かけないんですよ。
わざわざ書かなくてもみんなわかってるからっていうのナシ。

とはいえ、なんか、誰にともなく罪滅ぼしみたいな気持ちで、
近頃狂ったようにウードの香水をあれこれ試しては、感想などを記事にしているのです。
しかし、勘違いが正されたせいもあってか、
あんなにクサいクサいと思っていたウード香水に対して、
さほど苦手意識がなくなった自分に気づきました。
むしろ、好きな香りが掘り出されてしまうことが珍しくありません。
それでも、香道の香りが一番好きなことは変わらないですが。

また、それで興味を持って、香水に使用されているウードの香料はそもそもどんなものなのか?だとか、
アニマル臭ってそもそも何だ?とか興味を持ち始めて、
近頃は香料を買ったりしております。
本当に個人的なブームですが、この流れはしばらく続くと思います。お金が尽きるまで…

なお、上記にリンクさせていただいたサイト「進め!中東探検隊」のSEIWA様のプロフィールページに
「日本とアラブの香道をコラボさせた新たな道を作る予定」との記述があり、
もしも実現するならば大変楽しみなのです。