嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

ヴレヴ クシュ アヴェク モワ / キリアン

お花の季節まっさかりです(これ書いたの4月)。

世間はコロナコロナで花どころじゃねえし(これ書いたの4月)、行きつけの花屋さんはずっと休業していたのですが、
誰が何と言おうと、季節は変わらず巡ってきます。花屋さんも再開しました(ここは6月に書いた)。

少し前には、川沿いを散歩していると、付近の民家に植わるハゴロモジャスミンなどが香ってきたりしました(これ書いたの4月)。

そんで、フローラルの香水を使いたくなります。
ヴレヴ クシュ アヴェク モワはまさにフローラル。狂ったようにフローラル。

にしても、日本の春の花って感じじゃないですよね。
夏、真夏、南の国というイメージの香りです。トロピカルというか。
といいつつも安易なフルーティは入ってなくて、そのせいか子供っぽさはまったくないのです。あくまでお花。
それも花束のような生易しいものではなく、お花畑。
南の国で花畑の真ん中にベッド置いて寝そべったらこんな香りがするのではないか?

はたまたイメージしやすそうなものとしては、観光地にありそうな熱帯植物園の、
ムワッとしたビニールハウスみたいなところの、むせ返るような花々の香り?

「むせ返るような」という表現がこんなにもしっくりくるフローラルの香水、他にないのでは。
ありそうでなかったフローラル香。

冒頭から一切の迷いのないガーデニア、イランイラン、チュベローズが
ほんの少量で暴力的なまでに香ります。
ハニーのような感じもあり、クリーミーでとっても甘くて、フレッシュな生花感も強いのに、青々しさはあまりない。
とにかく危ういバランスで成り立つ香りだと思います。調香はさすがのアルベルトモリヤス監督。

砂糖の入ったヨーグルトみたいな?はたまた酸味の強いラムネ菓子のような?
そういう要素も感じる(同じ感想を海外レビューで1件だけ見かけた)のですが、
トップからそんなに大きな変化はないまま長く続きます。
最後の方に、バニラ感が少し強くなるくらいでしょうか。軽やかさの強いバニラで、ウッディは私はそんなに感じません。

やたら淫靡だったり、はたまた中二だったりといった印象があるキリアンですが、
「ヴレヴ(以下略)」はまさにそれを表現するタイトル。
多くの人は、この香りに対してもタイトル通りのセクシー系の印象を持つのでしょうか?

しかしながら、私の中でこの香りはどうも「脳内お花畑」というか、能天気というか、カラっと明るい印象が強いです。
そこがとても好き。大人の能天気さ。

StayHome中に、私がやたらめったら使いたくなったのはこの香りでした。
単に季節のせいだけじゃなく、ともすれば暗い空気に飲み込まれそうだった私の深層心理が、
この元気の出る香りを欲したのかもしれません。

キリアン(By Kilian)
ヴレヴ クシュ アヴェク モワ(Voulez-Vous Coucher Avec Moi)

調香:Alberto Morillas

キーノート:イランイラン、ガーデニア、サンダルウッド