嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

ルビコナ / ピュアディスタンス

急に季節が進んで涼しくなり申しました。
ルビコナを待ち詫びた人々のためかと思うようなタイミングで。

私も待ち詫びた者のひとりです。ありがとう気候。
カラッと晴れて涼しく、「もうずっとこんな感じならいいのに」と思うような秋の朝に
初めてのルビコナを試してみました。

エストにスプレーしつつ、ディテールを確かめるため少量を手首にも移すと
甘ーくクリーミーなベースの上に、これでもかと「女」を感じるローズやアイリス、
さらに、飲みたくなるようなジューシーなマンダリンと、
いかにも上質な、ツンケンせず絶妙に引き締まったベルガモット+グレープフルーツが重なり、
つい笑顔になりそうな始まり。

ムエットでもこのへんのフルーティは少し感じ取れて、
その気さくさに意表を突かれていたのですが、なんとなく予感していた通り、
ルビコナの驚きはこれよりさらに後にやってきます。

冒頭のハッピーなシトラスはほどなく去ってしまいますが、
その後もオレンジブロッサムとイランイランが明るく、
後者はオリエンタルでセクシーな色も添えながら、続きます。

と同時に、下の方にずっといたパチュリが想定以上に存在感を増してくることで、
表層の華やかさよりも格調高さ、奥行き、落ち着きを感じさせる香りに移行していきます。

私的ルビコナ真骨頂はここから。とともに、ムエットのみでは決してわからなかったところ。
そしておそらく暑い日に使っても味わえないところ。

このパチュリが、エエ~~~~~~~~~~~香りなんですよ。
ムエットで感じた尖り感や、面食らうほどの甘さは影を潜め、
彩度は低く、静かで、でも温かく、カカオか何かみたいにコクがあってなめらかで…

近年流行の、やけにシンプルな構成のニッチ香水群に慣れすぎて
私などはともすると忘れそうにもなるのですが、
良い香水の香りは、香源(?)から身体に沿うようにまとまって
「和音」となって立ちのぼる、香りを孕んだ空気が本体で、
ルビコナのこのパチュリも、当たり前なのですがそういう香り方をします。

私は香料を嗅いでるんじゃない、香水を纏っているんだ、という、
変な話ですが、ピュアディスタンスはそういう「何たるか」を思い出させてくれたりします。
だからこそですが、ルビコナは、たとえば手首のみに噴きつけて、
そこに鼻を近づけてばかりいると調香師の緻密な計算からはおそらく外れてしまい、
暴力的なまでの甘さや硬さにばかり気を取られることとなり、
このパチュリの、一番良いところがたぶん体験できずに終わってしまいます。

識者の皆々様には当たり前の、いまさらのお話とは思いますが、
鼻から距離を取って纏い、正しく香りを楽しむことをいま一度、強くおすすめしたい次第でございます。

甘く、エレガントで優しい女性性だけじゃなくて、
大地のようなゆるぎなさというか、父性寄りの安心感というか、
そういうものも併せ持っている、私にとってルビコナはそういう印象の香りでした。

なんだか華が足りない日の自分に、それを補うために、
はたまた、ちょっと能力を超える仕事が入っているような日に、勇気を補うために、
そういう「日常」にこそ、むしろ使いたいです。

ピュアディスタンス(Puredistance)
ルビコナ(Rubikona)

トップ:グレープフルーツ、ベルガモット、マンダリン
ミドル:ローズ、アイリス、イランイラン、クローヴ、オレンジブロッサム、クリーミィノート
ベース:パチュリ、シダーウッド、バニラ、ソーラーノート、ムスク
賦香率:28%

公式:https://puredistancejapan.shop/