嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

キュイール ダンジュ / エルメス

ひと昔前まで、エルメスの香水は高いなー高いなーと思っていました。
価値と価格が釣り合ってないとかいう意味ではなくて、単純なおねだんの話ですよ。
今みたいに、ニッチ香水とかそんなに世の中になくて、だいたいがアパレル系で、
私が欲しいと思うようなものは、エルメスとシャネルやギャルソンあたりを除けば、
大抵ディスカウントされたものが大量に出回ってたし。
むしろ、ブランドの服が高くて変えなくても、香水なら買える…くらいの位置づけだったし。

そもそもフルボトルで1万円を超すものって少なかったし。
たまに限定モノがヒットしたりして、
ビードールの限定モノがヤフオクで20,000円!とか、あったけど、
せいぜいそんなもんだったし。

それが今じゃ100mlボトルに3万、4万くらいは当然のように支払ってしまう。
なんなら6万円台くらいまでは仕方ないか、と思ってしまっている。
どうしてこうなった。
そしていつしか、エルメスの価格はむしろ平均的(モノによってはお手頃感)という認識に…
(絶対私だけじゃないだろ)

…そんなエルメスにも高級ライン「エルメッセンス」が。
サックリとフルボトルを買って試して、いらなくなったら誰かにあげよ~
なんてそうそう思える価格じゃないのですが、ラッキーにも、試す機会に恵まれました。

キュイール ダンジュ(Cuir d'Ange)/ エルメスHERMES
Launch:2014年
Perfumer:Jean-Claude Ellena
Notes:heliotropes、hawthorn、leather、musk

というのは、ここ数年の私はレザー香が苦手、という認識があるので、
店頭にもしこれがあっても、おそらく自分で試すことはなかったと思うのです。
表題の「Cuir d'Ange」は、「天使のレザー」
(この日本語一歩間違えると「天使の皮」で少々アレですね)。
その名の通りレザーの香りがテーマです。

一箇所に集中せず、程よく広がるきめの細かい霧が吹き出る高品質スプレーあるある。
そうして肌に乗せてみると、ほんの一瞬ツンとしたアルコールが鼻についた後、
最初からもうしっかりレザーの香りです。

一般的にレザーには男くさいような、ハードな印象があるかと思いますが、
これはそういったイメージとは異なります。
新しいスエードのような、柔らかで、繊細で、ほんのりと甘い香り。
私はエルメスの革製品なんて縁がありませんが、こんな香りがするのかな。

よくよく鼻を澄ますと、本当に慎ましい粉っぽいフローラルのほか、とてもか細く木の香りがします。
ヒノキのような、少しスパイシーにも感じられる香りで、私はそこがとても好き。

ごめん、あとはよくわからない。よくわからないけど良い香りです。
カーナルフラワーのときにも書いたのですが、本物のそれ(この場合は革)の香りの、
そのまんまの香りの緻密な再現をベースとしつつも、その中の好ましい要素の部分だけをほんの少々、
不自然にならない程度に、でも香る人の快さが最大限引き出されるようなギリギリのところまで拡張しているような、
何かそういう、とっても繊細なバランスを感じる良い香りなのです。

けして香水らしく目立つタイプの華やかな香りじゃないのですが、
エレナが10年かけて作ったともいわれるだけあり、
性別問わず、使う人の上品な色香だったり、光のような明るい雰囲気だったりを
ほんのりと拡張してくれそうな香りが、しっかりと続きます。

これはレザーが好きな方にも、はたまたレザーが苦手という方にもおすすめ。
やっぱり、食わず嫌いせず試すの大事だなー。