嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

デュナス デ ウン クエルポ / フエギア1833

好きなんだけど、一方で心のどこかに少々アンチフエギアなとこあります。
店員さんは好きですよ。皆優しく、めちゃくちゃ熱心じゃないですか。
自店のプロダクトを、早口でまくしたてるように説明し、
こちらの好みに耳を傾け、次から次へと提案してくれるあの感じ、
素直に嬉しくて楽しいですし、
ああ、この人は香水を心底愛してるんだなあと感じられますからね。
騙そうとしたり、押し付けようとしたり、冷たくあしらわれたり、
見下されたりなんてことも一度たりともない、
少なくとも私はそんな人に当たったことない。

店舗のあの雰囲気も好きですし、行ったら行ったで正直テンション上がりますし、
なんなら買っちゃいますし、何本か持ってますし、好きな香りもありますよ。

それらを踏まえつつ、それでももろもろの事情から、心の中にアンチを飼っています。


先日、久しぶりに店舗に立ち寄りました。
目当ては昨年夏に嗅いで印象に残っていたウード(?)香、商品名失念。

間髪入れずに近づいてきた店員さんに、まずは経緯を説明。
ウードを前面に出した香りなのかどうかはわからず、名称もコンセプト等もわからないが
茶色い液体で、たぶんアンバーが入っていて、
ちょうど香炉で香木を炊いた時の残り香のような良い香りがしたので、
そのときの香りを探してほしいと。

ここんとこずっと流行ってた「ウード」を謳ういろんな香水、
こんなん全然ウードじゃねえ!!!!!!って感じるものも多い。
でも、去年の夏にフエギアで嗅いだあの香りは、かなりそれらしい香りがして、
そのときは購入を見送ったものの、なんだかんだ忘れられなくて。

店員さんはさすが、即座にそれらしい香りを2、3挙げてくださり
うち1つ目を嗅いで私は首をかしげました。

これ、覚えのあるあの香りにとても近い。相当近い。
が、記憶よりも少々煙すぎるように思うし、
もっとこう、アンバーアンバーした甘さがあって、柔らかい感じがしたはずだった。

とはいえ、挙げていただいたほかの香りを嗅ぐも、まったくしっくりこない。
1つ目がいちばん近いことは近い。

このへんの感想を脳内で取りまとめることなくポロポロと片っ端からすべて口にするめんどくさい私に、
店員さんはイヤな顔ひとつせずに他の心あたりも挙げてくれました。
が、いずれもしっくりこない上、発売時期などから考えてみてもやっぱり違う。

となると、やはり1つ目のコレだったのでしょうね。

デュナス デ ウン クエルポ / Dunas de un Cuerpo:2018年
調香:ジュリアン ベデル
KEY NOTE:1.Amber 2.Olibanum 3.Sandalwood

「肉体の砂丘、という意味の名称の、かなりエロい香りです!!
ジュリアンが、その~、中東の女の子と遊んで、した時に、香った肌の香りとか、
海の香りとか、舌先のしょっぱさとかが再現されてるんです!!」

ていうか、店員さんにそんなこと言わせんなよ。
あとさあ、たかだか女と一晩遊んだくらいのできごとをいちいち香水にすんなよ。
大学デビューかよ。バンドマンかよ。

と、言いたい気持ちがないといえば嘘になりますが
(しかし世の中その類のコンセプトの芸術作品がけっこうありますもんで)、
とりあえず、肌に乗せていただきました。

パッと見ならずパッと嗅ぎ、よくあるエキゾチックなウード香。
良いんですけどね、それはそれで。
アニマリックな印象の香りでも、フエギアのは不思議と気持ち悪くならないですしね。

しかし、うーん、やはり、フランキンセンスとかの少々尖ったような、
スパイシーな感じと、煙!!!!!!が前面に出てしまう。
昨年夏に嗅いだときの、伽羅を炊いたあとの残り香をほぼほぼ再現している!と感じた
あのときの衝撃にはほど遠いな…

店員さんいわく、そのときは夏だったから甘さがもっと強く出たのではないか?とのこと。
アンバーというのは、日本人はつい「冬向きの香り」と考えがちであるが
実は夏の暑い気候の方が、甘く美しい香り立ちとなる、とのこと。

そうですかそうですか。確かにそうかもね。それでは夏を楽しみにしております。
とか言いながら、ちゃっかり伽羅アンバー(コレクション プーラ エッセンシア キャラ)と、
それに似せて少々カジュアル版みたいに作ったというナントカも乗せていただきました(名前は忘れました)

さらに、このようにたびたび名称を忘れてしまうため、
そこんとこなんとかなりませんかねえ?と訴える私に、
神のようにどこまでも親切な店員さんは、
今日つけたものをマークした立派なプライス表を持たせてくださったのです。

そして、途中で寄ったお茶屋さんに、置き忘れました。
この度は本当に申し訳ございません。
かろうじて「肉体の砂丘」というフレーズのみが記憶に残っており、
こうして記事を書くことができたのです。

ところで、すべての用事を済ませて何時間後かに帰宅した際に
あらためて手首のクエルポを嗅いでみたところ、おおおお!!これは!!!!という香りが。

話すと長くなるのでここでは割愛しますが、
私は実際に伽羅を炊いて香りを嗅ぐと、粒子を感じます。
これは伽羅と、ごく一部の沈香でしか起こらない現象です。
そのへんの品質の低い沈香ではダメです。
感じるというか、見える。粒子の映像のようなものがくっきりと脳裏に浮かんで、それが見えます。

これは共感覚とかそういう何か特別なことでもなんでもなくて、
幼少の頃から何度も何度も何度も嗅いだ体験により積み重なったイメージか何かなのだと思います。

時間を経たクエルポが、そんな香りを放っていたのです。
煙や乳香やスパイス感も相変わらず続いているのですが、
それらの香りの膜を切り裂くように、ベースにその伽羅の香りの、敷き詰められた粒子が顔を出して
今になって香っている、そんなイメージでした。びっくりした~。

まさにそれが私のこよなく愛する伽羅の香りの片鱗でもあったため、
興奮して何度も何度も嗅いでいましたが、それは長続きはしませんでしたね。
夏にもう一度、試してみたいと思います。