セヴィーヤローブ(セヴィリアの夜明け)/ ラルチザンパフューム
これを嗅ぐ機会になぜ恵まれたのか、その経緯についてもはや記憶はまったくないけれど、
何しろ初めてこれを嗅いだとき、私は本当に「あ、これはセヴィリアの夜明けだ!」と思ったのです。
何を言っているかわからないでしょうが、本当なんです。
なんならセヴィリアって何?どこ?国?セルビアとは違うの?といった状況だったのにも関わらず(セビージャならわかったが…)
この香りは「セヴィリアの夜明け」だ、と、本当に思ったのです。
「気のせい」「アホなだけ」といった可能性は排除して話を進めたいと思います。
このときの私、ラルチザンの名前はもちろん知っていたものの、
実際に嗅いだり、肌に乗せてみたりしたことはなく
何の先入観も持っておらず、この香りに限ってはただその名称のみを把握していました。
音楽なんかもそうだと思うのですが、
主題として掲げる「何か」を、それそのまんまじゃなくて、音だったり、
香水なら香りだったりで表現し、結果、それを聴いた/嗅いだ人間が、
共通してその主題を脳裏にクッキリと描くなりすることになるなら、
それってすごくないですか。芸術としてレベルが高いというか…
なんという表現が適切なのかわかりませんが、
まあとにかくそのように思った初めての香りだったので、思い入れが強いです。
真っ先に感じるのはラベンダー、
それからネロリをはじめとした、尖っていないシトラス系の香り。
ちらりちらりと顔を出すスパイスの香り。ピンクペッパーがこれ?
たぶんこのあたりの色彩感が、よくわからない異国の夜明けというイメージに
無意識に、一瞬でつながったのだと思うのですが。
私はラベンダーの香りを苦手だ苦手だと思い込んでいたのですが、
この香りを嗅いでから変わりました。
ラベンダー、良い香りだと感じるようになりました。
余談ですが、出張先でしら河のひつまぶしを食べて以来、
それまでは苦手だったウナギが大好きになりました。そういうことです。
ラベンダーなのにフゼアフゼアしておらず、
おっさんおっさんしておらず、クセが少ないのも私にとって良いところです。
で、私の場合、あっという間にトップやミドルは静まって、
すぐにラストの甘い香りが前面に出てきます。
構成をよく知らずに嗅いでいたときはバニラか何かかと思ってたけど、そんなもんは入ってなかった。
これが安息香でしょうか?
旅先での一晩だけの恋愛、みたいなものをイメージして作られた香りだそうですが
(そういうのをいちいち香水にするな、と常々言っておりますが、これはOKだ)、
まさに夜明け前の幸せなまどろみから朝、日常に戻るまでの
少し寂しいような、限りある時を過ごすみたいなマッタリ感。
どんなときに使えばいいかよくわからず、出番があまりないのですが
圧倒的に良い香り、好きな香りです。
話がそれますけど、何かのテレビ番組で、吉高由里子さんが
「恋してる時の心の中はどんな感じ?」とかいうとても回答しづらそうなインタビューを受けていて、
その答えが「夜明けの直前の空の、青、紫、オレンジのグラデーションのような色」だったのを見て、
わー、この人好き!と思ったことがあります。
セヴィーヤローブは、私にとってちょうどそんな色の香りでもあります。
セヴィーヤローブ | Séville à l' Aube(2012)
香調:オリエンタルシングルフローラル
トップノート:ラベンダー、ピンクペッパー、レモンツリーリーフ
ミドルノート:オレンジブロッサム、ジャスミン、マグノリア
ラストノート:ビーズワックス、インセンスアブソリュート、安息香、セヴィリア産ラベンダー
調香:ベルトラン ドゥショフール