嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

キャラ プーラ エッセンシア コレクション / フエギア1833

2019年、伽羅と聞いて私は飛びつきました。
飛びついたという割に、実際に嗅ぎに行ったのは同年夏だったんですけど。

まだ心にアンチフエギアを飼ってはいなかった頃の私に、店舗の親切なお兄さんは
この伽羅シリーズについて熱っぽく説明してくださいました。

いわく、この製品には本当の伽羅が入っている。
伽羅が入っているのにこのお値段!?と、多くのお客様が驚かれる。
ほんの少量で濃く長く香るし、経年劣化も少ない。
ジュリアンいわく、○年経っても香りは変わらない
(何年て言ってたか忘れたが、割と非現実的な数字だった気がする)。
以上の理由から、一見お高いように見えても、実はとても良心的な価格ともいえる。
とのこと。

で、私はフローラル好きなので、ロサとハスミンをお試しさせていただいたものの、
伽羅の香りという意味では、正直よくわかりませんでした。

当該製品についての説明、公式の記述を引用しますが

香水の作り方やまとい方の原点に立ち戻り、
原料が持つピュアな香りと複雑さを表現し、
魂を感じさせる革新的コレクション。

「プーラ」とは、スペイン語で「ピュア」を意味し、
その名の通り溶剤を一切使用しないため、
原料のピュアな香りを味わうことができる。
プーラ エッセンシアは、アルコールが入っておらず、
1滴で力強く濃厚ながら、身にまとう人の体温や仕草に合わせて香り立ち、
時間と共に柔らかに広がる。

 ここまでは、伽羅シリーズがどうって話ではなく、
プーラエッセンシアの説明ですよね。

フエギア創業者ジュリアン・ベデルは
京都での香道体験や伝統的な香水のまとい方にインスパイアされ、
希少価値の高い天然の伽羅を「キャラ プーラ エッセンシア」の核として選んだ。

伽羅を含む沈香の真骨頂は、加熱したときの香りにあります。
沈香はともかく伽羅は、常温であってもうっとりするような良い香りがしますが
それでもそれは、まだまだ序の口です。

真っ赤に熱した炭団を埋め込んだ灰の上に、小さく小さく切り取った伽羅のカケラを置いて、
灰の深さによって微妙に火加減を調整し、初めてあの、この世のものとも思えない香りを発します。

伽羅シリーズに配合した「伽羅」というものが、
果たしてどんな方法で抽出されたどんな素材なのか、
そこらへんはちょっとわからないのですが(日本語で説明されているところがあったら知りたい)
少なくとも、人肌程度の加熱では、その真価は発揮されないと思うのですがどうなんでしょう。

いやね、常温の香りもそりゃあ良いですし、何が最高かなんて、価値観は人それぞれですけど
日本の香道という伝統文化からインスパイアされたというのならね。

そう考えると、「伽羅の香り」を香水で再現するなら、
「天然の伽羅」から抽出した何かなんかじゃなく、合成香料のほうがよほどリアルに近づくのかもしれません。

そもそもこの製品は、炊いた伽羅の香りを再現するなどというコンセプトでは全くなく
伽羅が含まれていることの満足感を得るためのもの、というところの方が大きいのかもしれません。

伽羅は、東南アジアに産し
樹木内の樹脂が長い年月をかけて形成、熟成された
沈香の中でも最上品といわれるもので、
神秘的・根源的な芳香となるため、非常に希少な原料。

3種の伽羅と、貴重な植物由来の原料をブレンドした、
ピュアで唯一無二のエッセンス。

 東南アジアっていうか、伽羅の産地はベトナムに限りますが、
ほぼ枯渇しつつあるともいわれています。
もちろん、めちゃめちゃ高価です。正真正銘の伽羅であるなら。

なお、伽羅と、それ以外の沈香の区別に関する基準って、
明確で客観的なものは存在してないです。

沈香の最高級品が伽羅である、と定義されているケースが多いですが(そもそもこれも一概にはいえない)、
じゃあどのような状態であれば「最」高級と位置付けられるのか、というとこですね。

木の形をしている状態であれば見た目でだいたいわかることも多いですが、
伽羅によく似た見た目の沈香もあります。

木に含まれる樹脂の量だ、という記述も散見されますが、これは正確じゃないです。
また、よく言われるのが
沈香は過熱しないと香らないが、伽羅は常温でも芳香を発する」というもので
確かに伽羅の香りは常温でも強いですが、それでも正確とはいえません。
沈香もモノによっては常温でそれなりに良い香りがするため。

あとは、削ってみたときの感触だとか、結局炊いてみた時の香りだとか、
いろんな方法でいろんな鑑定者が経験を積み、見分けているようで
それらを総合すれば、だいたいの鑑定者たちの見解はおおむね一致する結果となるのでしょうが
別に資格があるわけでもなし。

そもそも沈香と伽羅の間に明確な違いなんてなく、グレーで地続きのものだ、としても
価格には、あまりにも大きな差があります。
いくら品質が低くても、それが伽羅でさえあれば、価格はまったくもって跳ね上がります。

中東のウード事情のことはちょっとわからないけど、日本ではそんな感じ。

フエギアのこの製品において使用された伽羅とは、
いったいどこの誰が認定(?)した伽羅なのだろうか。

あと、3種の伽羅って何だろう。伽羅は伽羅だよな。
銘の異なる3つの伽羅ということなのか?別々の、3つの香木ってことなのか?
いずれにしろ、加熱していない伽羅の香りに、そんな大きな差はないような気がする。
いや、私の嗅覚が鈍いせいかもしれんけど。意味あるのか?3種の伽羅。

KYARA PURA ESENCIA COLLECTION

Kyara Ambar(アンバー) ¥64,000-
Kyara Jazmin(ハスミン) ¥67,000-
Kyara Rosa(ロサ)     ¥110,000-
Kyara Sandalo(サンダロ) ¥65,000-
Kyara Tabaco(タバコ)   ¥91,000-
Kyara Te(テ)       ¥72,000-
Kyara Vainilla(バイニージャ) ¥72,000-
Kyara Full Set Premium ¥540,000-

余談ですが、
インターネットで検索して読んだことがある人も多いかもしれませんが、
香料関係の企業で仕事をされていた方によって2006年に執筆された文章で、
炭酸ガス抽出という当時最新式の方法で採りだした伽羅の精油があって、
これを商売のために売るならいくらになるか計算した結果、
¥20,000,000/kgという数字がはじき出された、というような記述があります。

フエギアで使用されている「伽羅」がどんな精油なのか、
どれくらいの量なのか、そこらへんは全然わからないですが
まあこれと同じと仮定して、もし1kg使うため仕入れに¥20,000,000かかっていたとしても、
¥540,000のセットが40個売れれば一応元がとれちゃうね!などと、
まったくもってしょうもないことを考えたりしました。

まあ、私は香水において使用されている香料がなんだとか、
通常ほぼ気にしない(嗅覚鈍いからどうせわかんない)ですし、
良い香りならそれでいいでーす!と思っているのですが、
このフエギア伽羅シリーズに関しては、ちょっとつっこまずにおられませんでした。
だって高いじゃん。

ここまでいろいろ言いたいことを言っておいてなんだけど、

デュナス デ ウン クエルポ / フエギア1833 - 嗅覚が鈍い人の日記

の記事の際に店頭で試した伽羅アンバー、とても良かったです。

伽羅の香りは私は感じませんでしたが、
時間が経ったらなぜだか下の方からお花のような香りが出てきて、
それがとても良い香りだったのです。
フローラルが好きなので。

もし私が石油王だったら、迷わず買っちゃうと思います。


キャラ プーラ エッセンシア コレクション | KYARA PURA ESENCIA COLLECTION(2019)
調香:ジュリアン ベデル