嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

ヌーヴォー モンド / ルイ ヴィトン

肌に吹き付け、最初に嗅いだそのときの印象というものを、
めっちゃ慎重に解きほぐして言葉にすると、
自分が何か丘の上みたいなところに立っていて、見下ろすとずいぶんと深く、
日の光も陰るようなずっと下の方に風が吹いており、
グレーがかった、そして少しパールがかった、粒子の細かい砂がその風に乗って、
高いところの日の光を受けて時折光りながら、不思議と透明感を持ったベールのように、
ゆっくりと、スースー流れていく。そういう絵が浮かびました。

以上、誰にとってもなんの参考にもならない情報でした。

そんな冒頭、かなり無愛想で甘さ控えめで、軸となる香りはウード。
それもしっかりと木の香りがするウードといいますか。これは変な表現ですけど。

このウード、バングラデシュ産という。
キャバリエ先生が惚れ込んで山ごと買い取った…とする記述も目にしましたが
そこの真偽は知らんし、もし真としても、沈香って木ごとにも部位ごとにも香りは違うから
あんまり意味ないような気がするし、つくづく海外のウード関係って適当だよな。

まあそれはいいんです。
ウードってともすれば目立ちすぎる印象が私の中にはありますが、そこはさすがの先生、
しっかり香っているのに、品良くほかのものたちも引き立てている、そういう香り方のウードです。
そのためか、かなり肌との一体感が強いというか、独特のレザーのような香りにも感じるくらい。
ちょっと煙強めですね。繰り返しますが、かなり甘さ控えめです。

そして!ココア。なんだよ唐突にココアって…と思いましたが、確かにココアです。
公式による煽り文句「ウードウッドとココアの予期せぬ出逢いから誕生した」っていうのがありますが、
そりゃそんなん誰も予期しないだろ。
でもこのココアが絶妙で、下の方でこっくりとした苦みと香りを添え続けます。甘さは控えめです。

さらに時間の経過とともに(といってもそんなにかからない)、
ちょっとした日の光みたいにウードを押し退けサフランが出てきて、
下の方ではブラックカラントがほんのりと顔を出してきます。
これがまた、ほんの少し甘いけどあまりフレッシュではない、
華やかさのまったくない、なんだかとても好ましいカシスなんですよね。

冒頭で浮かんだグレーの絵は、時間の経過とともに様変わりして
最終的にはブラウンがかったダークレッド?赤みがかったダークブラウン?みたいな色に。

重厚な香りなので秋冬に…と思いがちなんだけど、
春や夏に少しの甘さと華やかさが出てきたりするかもしれず、
私はそれを楽しみにしています。
男性的な香りだけど、女性が使っててもめっちゃ素敵と思います。

ルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON
ヌーヴォー・モンド(Nouveau Monde):2018年

アガーウッド、ココア、サフラン、パチョリ、インセンス、ブラックカラント

調香:Jacques Cavallier

公式:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/products/nouveau-monde-nvprod1030135v