嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

マティエール ノワール / ルイ ヴィトン

冒頭ではいきなりウード。
なめらかなパチュリと澄み切ったホワイトフローラル。
少し酸味もあります。ウードの酸味なのでしょうか?
それとも何かアニマルノートが入っているのでしょうか?

何にしろ、意外とクセが強いんじゃ!!!!

…と思いながらも、全体にとても透明感があることにすぐ気づきます。
ウードなのに不思議。少しアクアティックな感じすらするのです。

そこに気を取られていると、この香り、突如大きく表情を変えてきます。
急に全開で前面に出るブラックカラント。アンタは今までどこにいたんだ。
そうなるまでに、大して時間はかかりません。

このブラックカラント全盛期が、すごーく甘く、少し酸味もあっておいしそうな、
とっても「かわいい」香りでもあり、それでいて、何かとても暗い、
陰鬱な雰囲気を含む香りでもあり、この多面性に、なんともいえない魅力を感じます。

このあたりの傾向としては、アトラップ・レーヴとある種の共通点があるかもしれません。
香りは全然違うんですけど。

ちなみにくどいようだけど、私はフルーティが苦手です。
香りそのものが苦手というより、自分がそれを纏って長時間嗅いでいると頭痛がしてきてしまう、
そういう体質的な問題で、しかもベリー系やカシスにその傾向が最も強いと思っていたのに、
この香りは不思議と、そういった気配がまったくないです。
理由はわかりません。これだけお高いのだから、香料の品質に理由があったりするのでしょうか?

ジャスミンです!!スイセンです!!シクラメン!!ローズ!!!!!!という主張が
あまり感じられないけどきっと香っているのであろうフローラルとともに、
このブラックカラントが、長く甘ーくこっくりと香り続けます。
こっくりとしてるのに重くはありません。
そうしてだんだんと、甘さはきっちりとキープしたまま最後まで残るのはインセンス。

あれ、そういえば、ウードはどこにいったのか?

ウードってとにかくやたらとしつこく長く残り続けるものが多い印象があり、
私はそれが少々苦手なんですけど、
マティエールノワールのウードは本当に冒頭に、ちょっとコイツ脅かしてやろう程度に香り、
気が済んだらさっさと後進のフローラルフルーティに道を譲って消えてしまいます。

なんか、これはこれで好印象。珍しいパターンですよね。こういうわかりにくい個性、好き。
ブラックカラントの香水はいろいろあるけれども、
マティエールノワールは、やっぱりヴィトンらしく透明感があり、
全体が軽やか~にまとまっています。薄いという意味では決してなくて。

私はヴィトンの香水、おおむね好印象なものが多いのですが、
甘さと酸っぱさ、苦さ、重さと暗さと透明感、クセの強さとかわいさ、
何かこう、いろいろな要素のバランスが、すべて好みに合致して、
総合的に一番好きなのはコレかもしれないです。

フローラルやフルーティに苦手意識がある人にもぜひ試してほしい香り。

ルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON
マティエール・ノワール(MATIÈRE NOIRE):2016年

アガーウッド、ジャスミンサンバック、ナルシス(水仙)、グラース産ローズセンティフォリア、シクラメン、パチョリ、
インセンス

調香:Jacques Cavallier

公式:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/products/matiere-noire-014421