嗅覚が鈍い

嗅覚が鈍いです

香木を売った(4)

qfr.hatenablog.com

のつづき、2軒目。

都心に実店舗を構えるこのお店。
ちゃんとした香道の道具やさまざまな香木、練り香・匂い袋等のお香、
仏具としてのお線香や塗り香にお数珠、はてはアロマ関連商品など、
とにかく幅広く、きめ細かく取り揃えています。

WEBサイトにもかなり力が入っており、検索条件なども細かく設定して商品を探すこともできます。香木の鑑定・買取にも力を入れているようです。

駅からすぐのそのお店は、こじんまりとしつつもキレイに、所狭しと香り関係の商品が陳列されており、時間があればゆっくり見たいところではありましたが、
礼儀正しい若い店員さんに案内され、そそくさと二階へ。
すぐに現れた「鑑定ができる人」から名刺を受け取り、挨拶をして会議机に着席しました。

代表取締役社長というその男性は、わりとお若いけれど恰幅が良く貫禄があり、
いかにも今どきのビジネスマンらしく刈り上げてパーマをかけ、
オシャレなジャケパンに身を包んでおりました。

女性従業員が出してくれたお茶をいただきながら観察。
ちゃんとした香炉も用意されていたけど、社長はそれは使用せず、
カバンから取り出したポータブル電気香炉(非売品とのこと)をセッティングしつつ香木を手に取りました。

削っていいか確認を受け、許可すると、これまた手際よく削ってはちょこっと嗅ぐ。
すべて手早く嗅いで、1軒目とは異なり、何度も何度も確認はしない。


そしてパパっと出してきた結論は、「すべて合わせて55万円」。
さらに、さっさと買取のお話にもっていこうとする。

ペースに巻き込まれたくなくて「あー、ちょっと考えます」と早めにぶった切り、
内訳というか見立てを確認してみると

  1. 大モノ(113g):伽羅です。
  2. かつおぶしくん(34g):インドネシアのタニ沈香です。見た目でわかります。
  3. ずっしり様(18g):伽羅です。
  4. 双子ちゃん(7g):沈香です。
  5. 木材さん(6g):インドネシアのタニ沈香です。見た目でわかります。

とのこと。

さっきのお店でもそうだったけど、インドネシア沈香ってそんなに見た目でわかりやすいのか。
ていうか、タニ沈香って何?

にしても、3のみならず大モノの1をも伽羅と断定するのであれば、
総額55万はずいぶん安くないかね?

相みつの話はしないながらもそれとなく疑問を口にすると、
社長いわく「何かのニオイが香木に移っちゃってるんですよね。なので、すぐには売れないので…」

そう、私が持ち込んだこれらの香木には、確かに妙なニオイが移っています。
祖母の家で保管されていたとき、何か別な、おそらくは練り香などといっしょくたで
本当に雑然としまわれていたため、何かスパイシーな香料(たぶん八角か何か)の香りが移っているんですよ。
社長はそれを理由に、「伽羅だけど」この価格としたといいます。

「倉庫に保管して、半年くらい置いてにおいを消さないと売れないんですよ~」
すかさず
「つまり、私が自宅で半年保管してニオイを消したら価格は上がるってことですか?」
と尋ねると、社長はロコツにしどろもどろになった。
「やー、保管中に空気に触れると樹脂が固くなってですね…」

空気に触れることで樹脂が固くなるなんて初めて聞いたぞ。
しかし社長は、とにかく、自宅保管ではダメなのだといいます。
それが本当だとして、そして樹脂分の固い香木はダメなのだとして、
だったら、アナタがたが欲しがる古い香木なんてどれもみんなダメなのでは…

ちなみに、私の認識では香木というのはそんなにヤワなものではなく
なんなら水洗いしても大丈夫なモノ。言わなかったけど。

「たとえばこの小さいやつだけ、とかそういったお買取りはしていただけないのですか?」
と尋ねると、やはり少し小さな声になり
「ええ、そうですね…その大きいのとセットということで…」
と、あくまで抱き合わせでの買取を条件とするらしい。

難色を隠さない私に、それでも社長は食い下がり
委託販売であればもっとご希望の価格で買い取れますよ、とか、
香木は今が一番高い、これから値は下がっていく、とか、矢継ぎ早に追い込みをかけてきますが、
「あー、大丈夫です!ちょっと検討しますんで、持ち帰ります」つって、
お時間いただいたのにスイマセンなど、ヘラヘラと詫びも入れつつすべてお断りしました。

帰りは社長も従業員のみなさんも、態度を急変させるとかいったことはまったくなく
最後まで笑顔で見送ってくださいました。


しかし、やはり相みつ大切。面倒でもしっかりやるべきですね、これは。
1軒目のお店は雰囲気はかなりざっくばらんとはしていたけれども、
香りの確認はもっとしっかりしていたように思います。
今回のお店はそこらへんからして怪しく感じてしまいました。

話の合間合間、私が少しでも考え込むようなしぐさを見せると、
「その時計イイですね!」などと雑談を挟んでくるのですが、
これは思考を遮ろうとしていたのではないか?と勘ぐってしまう。
違うなら大変申し訳ないのですが、そう感じてしまった。

価格を提示してからは、それまでと打って変わってかなりセカセカと
少々強引に話を進めようという雰囲気もあったと感じてしまった。

しっかりしたビジネスマン風だけど、商人だなあ。
若い女だと、ああいう人にはナメられてふっかけられるのかもしれない。若くないけど。

というわけで、この店はナシだな。と結論を下しつつ、

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へつづく。